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同年代の女性として見た森茉莉

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    JUGEMテーマ:自分を高めてくれた本

     

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    同年代の女性として見た森茉莉

     


    甘い蜜の部屋 (1975年)

     

    晩年の森茉莉の面倒を見ていたのは、次男の山田享だったようですが、森茉莉はこの次男については、ほとんど書いていません。

    本人の山田享や編集者だった小島千加子の文章によって、次男やその妻と交流があったことを知らされた読者が殆どなのではないでしょうか。

    逆に長男の山田爵については、ジャックが訪ねてきてくれて再会してからは、お互い恋人同士のような甘やかな時を過ごし、どんなに幸せだったか、というようなことを、小説にもエッセイにも書いていました。

    長男の恋人も大好きだったとも書いていましたが、この恋人は既婚者だった長男の愛人で、最終的には二人は別れて、長男は妻と継母の元に帰ったようです。

     

    ここからは私の推測になりますが、森茉莉にとって長男のジャックというのは、父鴎外亡き後、ありのままの自分を受け入れてくれた唯一の存在だったのではないのでしょうか。

    これが次男となると、世話をやきながら、ああしなきゃ駄目だのこうした方がいいのと意見したと思われます。

    森鴎外が亡くなった後、と言うか、病床の鴎外の意識がなくなったあたりから、親戚縁者は手の平を返したように、鴎外の後妻とその子供達に冷たくなったようですし、森茉莉は最初の離婚で元夫に恨まれ、肩書は立派な元夫とその友人達に悪い噂を流されたり、再婚相手からは、自業自得としか言いようのない状況で半年で離婚されたりと、作家として世に出るまでは、周囲の誰からも冷たくあしらわれていたような印象があります。

    そんな中で、長男のジャックは彼女にとって、唯一自分を理解してくれて孤独から解放してくれた存在だったのではないでしょうか。

    …まあ、理解してくれた相手なら、誰でも自分に良くしてくれる訳ではない。相手が詐欺師の場合もある、ということが身にしみて分かるような結果になった訳ですが。

     


    贅沢貧乏のお洒落帖 (ちくま文庫)

     

    話は変わりますが、私は森茉莉自身の私小説やエッセイ(『贅沢貧乏』等)と、美少年と壮年の美男子の残酷な恋愛を書いた小説(『恋人たちの森』『枯葉の寝床』『日曜日に僕は行かない』)や美少女と父親の耽美的な世界を書いた「甘い蜜の部屋」とを読み比べると、何故こういう人が、美しく品があるが利己的で冷たく行儀の悪い、嫩い男や女を賛美するのかと、違和感を覚えることがあります。

    自分を立派な父親に愛されて育った令嬢で、上等を愛し、貧乏贅沢を嫌って贅沢貧乏な生活を貫く孤高の人として書くような人が、何故利己的で依存的で行儀の悪い男女を、こんなに美しく上品な存在として賛美するのかと。

    今読んでみると、「甘い蜜の部屋」の美少女モイラはどう見ても依存型サイコパスですし、「恋人たちの森」の美少年パウロも、同じような傾向が見られます。

     


    幸福はただ私の部屋の中だけに (ちくま文庫)

     

    案外、この美少年達は長男のジャックをモデルにして書かれたのではないか、などと私は思ったりするのですが。

    美少年と美丈夫のモデルは、アラン・ドロンとジャン=クロード・ブリアリ、ということは、森茉莉の読者の間ではよく知られたことです。しかしアラン・ドロンに、依存的でだらしなく行儀の悪い印象があるようには思えません。どうやら森茉莉にとっては、自分の書いた美少年は、狡くて依存的で行儀が悪いことが絶対条件なようなのですが。

    確か美輪明宏が、手がけた舞台「枯葉の寝床」を森茉莉から酷評されたのは、美少年が、意地もあれば礼節も知っているかのような演出をしたからだったと思います。

    森茉莉は、フランスと悪徳の匂いのする美男子が好きだったようですが、その中に長男ジャックも入っていたのかも知れません。

     


    紅茶と薔薇の日々: 森茉莉コレクション1食のエッセイ (ちくま文庫)

     

     

    森茉莉の中の、混沌とした世界というのは、一筋縄ではいかないもののように思えます。

     

     

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